【書評】HELPING CHILDREN SUCCEED 私たちは子どもに何ができるのか

育児本書評
タヌキ

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HELPING CHILDREN SUCCEED 私たちは子どもに何ができるのか 非認知能力を育み、格差に挑む とは?

「やり抜く力」「好奇心」「自制心」
人生の成功を左右する力の育み方を、最新の科学的根拠(エビデンス)と先進事例から解き明かす
・本書では、非認知能力を育む方法を具体的に示している。
紹介される事例は海外のものだが、日本の問題にも通じる内容が満載だ。 

■認知能力から非認知能力へ
近年、教育分野では「非認知能力」の育成に高い関心が集まっている。「非認知能力」とは、IQや読み書きの学力のような「認知能力」に対する、やり抜く力・好奇心・自制心のような能力のことを指す。 
ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマンは、貧困や虐待など逆境にある子どものなかでも、これまで重要視されてきたIQや読み書きのような「認知能力」ではなく、やり抜く力・好奇心・自制心のような「非認知能力」がある子どもの方が、成人後に学歴が高く、健康状態がよく、生活保護率が低く、年収が高いなど、将来挫折することなく成功する可能性が高いことを発見した。 

■見過ごせない子どもの貧困
「平成28年 国民生活基礎調査」によると、日本の子どもの貧困率は約14%。日本でも7人に1人の子どもが、貧困ライン以下の生活をしていると言われるようになり、「子どもの貧困問題」「教育格差」は切実な課題となっている。この子どもの貧困は、一生の財産になる「非認知能力」を獲得する機会を奪い取っている。 
そして非認知能力を育まれる機会を逃した子どもは、大人になった後に仕事や生活面でより多くの機会を失う可能性が高く、結果として、自身も貧困に陥ってしまうという貧困の連鎖を生んでいる。それは単なる家庭の問題だけではなく、保育園・幼稚園や学校、地域社会で、周囲の大人たちがどのように子どもと接するかによっても大きな影響を受けるとされている。 

■本書をどのように活かすか? 
一方で、非認知能力の重要性は理解されたものの「どうすれば非認知能力を伸ばせるのか」という具体的な方法論は課題として残されていた。 
本書は、その疑問に答えようとすべく、2年にわたって新しい研究や事例を取材して結実した内容。 

・幼少期の親子関係のストレスをどうすれば和らげることができるのか?
・問題行動のある子どもがいるクラスの成績を上げるにはどうすればいいのか?
・自信のない生徒のモチベーションを高めるには、どんなフィードバックが有効なのか?

子どもの貧困は、一生の財産になる「非認知能力」を獲得する機会を奪い取ってしまう。ではどうしたら良いのか。その答えへの扉が、本書の中にある。
――駒崎弘樹(認定NPO法人フローレンス代表理事、「日本語版まえがき」より) 

著者 ポール・タフとは?

・『ハーパーズ・マガジン』『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』編集者・記者を経て、フリーのジャーナリスト。子供の貧困と教育政策を専門に多数の執筆・講演活動を行う。著書に『成功する子 失敗する子』(英治出版)。 

書評

非認知能力の重要性を再確認した

以前書評した「学力の経済学」でも書いたが、幼児期の非認知能力が、その子の今後の人生において、収入や犯罪率に大きく影響することが社会実験で証明されている

実際にアメリカの貧困家庭と裕福な家庭の子どもの大きな差は、目に見える親の資産や通っている学校ではなく、本質的には、その環境で得られる非認知能力の有無だった

教育に関する本では著者の「経験」や「主観」に基づいた通説や憶測が多い中で、しっかりコホート研究されたエビデンスを基に主張しているので、信頼できると感じられた

・2013年、アメリカの公立学校に通う生徒の中で「低所得層」が過半数を超えた
・低所得層と裕福な生徒の差はこの20年以上まったく縮まっていない
・貧困家庭と裕福な家庭で育つ子が持つ大きな差は「非認知スキル」と呼ばれる粘り強さ、誠実さ、自制心、楽観主義などの性格的要素、気質だ

「非認知能力」を高めるための具体的なアプローチ法

親はどのように関わればよいのか?
またどのような方針を持つ教育機関に子どもを任せればよいのか?
親や教育機関以外の大人との関わりの中で、親が気をつけるべきことはなにか?
どのような交友関係を重視すればよいのか?

非認知能力を高めることが人生において重要とわかったいま、
その能力を高めるための具体的なアプローチ方を理解したい

本書では、非認知能力を高めるためには
能力を伸ばすために特定の教育方法を実践したり
知識をインプットするのではなく、
「子どもの取り巻く環境」が重要だと述べている

・非認知スキルが重要だとする考えは、実際の教育現場での感覚とも一致するが、肝心の、スキル伸長のための具体的な方法が明らかではない
・実際に、非認知スキルを伸ばしていると思われる教師達が何をおこなっているか見てみると、数学や古文を教えるような方法論は使っていない。非認知スキルの存在さえ口にしない。
・非認知能力は教えることのできるスキルではなく、子どもを取り巻く環境の産物であると言える

どのような環境かというと、主にポイントは3つだ

①乳幼児期におけるストレスがない環境
親同士の口論、泣いている状況への無関心など、日常的におこりうる状況も該当する。

・貧困家庭と裕福家庭の子どもが置かれる環境の差で最も注目すべきは本や教育玩具などの知的刺激以上に「受けるストレスの量」だ
・幼い頃に経験した高レベルのストレスは前頭前皮質の部位の発達を阻害し、感情面や認知面で制御能力が育つのを妨げる
・子どもが感情面、精神面、認知面で発達するための最初にして重要な環境=親である
・ひとつめに、子どもは親の反応によって世界を理解する。自分の立てた音や聞く音に親がどんな反応を示すかによって、世界のありようを知る

②親が子どものストレスを調整する存在として機能している環境
子どもが何らかのストレスを受けた時に、それを受け入れ、慰め、大したことないよと抱きしめること

・ふたつめに、子どもが受ける圧力の外部調整装置となる。子どもが動揺している時に、親がストレスに対処したり、落ち着かせたりすることで子どものストレス対処能力が上がる
・幼児期におけるトラウマはもちろんのこと、夫婦間の口論や、泣いているのに放置して反応しない、ずっとテレビを見させるなどのネグレクトも、子どもの発達に悪影響をもたらすことが医学的に証明されている
・どのような取り組みが子ども非認知能力向上に効果的か=親と子のアタッチメント(愛着)形成のための関わり方を深めるようにすること。
・ただし、パンフレットを渡すなどして情報を提供するだけではなく、疲れ切った親自身の心理面、感情面の支援が重要。親は共感や励ましを通じて子どもとの関係について気を楽にさせて安心感を持つ

③全ての子供時代にいて「自律性」「有能感」「関係性」を感じられる環境
特に子どもが失敗したとき、自分の成功を信じ、思いやりと敬意を込めて関心を向けてくれる大人がいる環境に身を置いてそこに帰属意識を持つこと

・教師や生徒への金銭的インセンティブは学力向上に寄与していると統計的に見られなかった
・金銭的インセンティブや、逆にお仕置きされる賞罰ではなく「内発的動機づけ」が効果的だった
・特に「有能感」「自律性」「関係性(人とのつながり)」が満たされる環境にあるとき、人は内発的動機づけを維持できる
・自律性が高まるとき=自分で選んで、自分の意志でやっているのだという実感を最大限に持たせ、管理・強制されていないとき
・有能感が高まるとき=やり遂げることはできるが、簡単すぎない課題が目の前にあるとき
・関係性を感じるとき=他者に好感を持たれ、価値を認められ、尊重されていると感じるとき

・自分の成功を信じ、思いやりと敬意を込めて関心を向けてくれる大人がいる環境に身を置いてそこに帰属意識を持つことが重要
・このメッセージを一番敏感に受け取るのは子どもが「失敗したとき」である
・このとき、子どもが何らかの関わりで「非認知能力を持った人間になる」ことは証明されなかったが、「環境の影響を受けて非認知能力を発揮できるようになる」ことがあるとわかった
・そういった環境に身をおき、非認知能力を発揮し続けることで結果を出せるようになる
・大人が「自分の成功を信じ、思いやりと敬意を込めて関心を向けてくれる」ことで、「私はこの学校に所属してる」「私の能力は努力で伸びる」「私は成功できる」「この課題は私にとって価値がある」と思える子どもが多い環境に身を置くことが重要だ

子どもの取り巻く環境を整備すること、子どもを信じて期待することが親の役割だと感じた

自己肯定感を高めるための子どもへのアプローチ法とも共通する要素が多いと思うのだが、子どもに「あなたはできる」というメッセージを伝え続けることは重要だと改めて確認できた

また、自分たち親だけではなく、他の大人も同様のメッセージを発信し、子どもが
大人は(周囲の人は)「自分の成功を信じ、思いやりと敬意を込めて関心を向けてくれる」と普段から思えることが重要だ

そういったメッセージを発信してくれる教育者がいる教育機関を見定める役割も、親にはあると考える

よく、東大に合格した生徒が「努力が実りました」と発言しているが、まさにこれは自身の努力が叶う環境に見を置いていたことこそが、その生徒の成功の秘訣であると思う。

つまり、努力したいと思える環境、努力したいと思えるマインドを維持できること。

「私はこの学校に所属してる」「私の能力は努力で伸びる」「私は成功できる」「この課題は私にとって価値がある」と思えることこそが、良い環境に身を置いていると言えるのではないだろうか?

子どもの能力伸長に対してだけでなく、部下に対しても。

子どもに対してだけではなく、部下やチームメンバーに対しても
同様の関わり方を意識する(重要な環境を用意する)ことで、
本来の能力を発揮できるのではないかと感じた
子どもにとどまらず、大人も含めた、能力伸長において
言えるメソッドである気がする

子どもだけではなく、仕事場でも使える考え方だ

どんな点に気をつけて教育機関を見定めると良いか?


「自分の成功を信じ、思いやりと敬意を込めて関心を向けてくれる」教育者がいる学校、幼稚園、保育園を選ぶ際、どのような点に気をつけるとよいのか?

その指標の一つとなるのが以下の教育方法をとっている教育機関ではないだろうか
この教育方法は、非認知能力が実際に伸びた実績のある教育方法であり、アメリカの低所得層への教育プログラムとして採用されているし、21世紀の仕事に必要な能力を伸ばすための教育方法である

ディーパー・ラーニング(生徒中心の学習法)
・探求型の指導(教師がただ講義をするだけでなく、生徒に議論をさせる)
・プロジェクト型の学習(生徒たちが、グループで、仕上がるまでに何週間〜何ヶ月もかかるような複雑な課題に取り組むこと)
・実績重視の評価(期末試験の得点で判断するのではなく、1年かけて築いた実績、プレゼンテーション、文章、芸術作品などで評価すること)

簡単に言うと、「知識を一方的に伝え、反復作業で暗記させるだけの教育」とは正反対の教育方法である。

おわりに(非認知能力をめぐる私の考察)

私の中で幼児期に身に着けてほしい能力やその伸ばす方法は
数カ月悩んだトピックスであった
そのため、手法有りきで幼児教室体験巡りをしたり、
通信教育のお試しお取り寄せを数種類したりなど。

しかし、手段が目的と化してしまったタイミングがあり
その結果、本質的に何を、どんな能力を、伸ばしたいのか
自分の中で言語化しようと試みた

その際に参考にした、本書「私たちは子どもに何ができるのか」「学力の経済学」は非常にエビデンスがあり、明瞭な良書だった

「子どもに将来困らない能力を、幼児期から伸ばしたい」
「でもどんな能力を伸ばしたら良いかわからない」
そんな親御さんにはぜひ一読をおすすめしたい

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